Z
Isamu Wakabayashi
Zのゾーンでは、それぞれに孤立を本性とする彫刻家と詩人との間に出現した 「言語と美術」の鋭い交差を見つめます。すでに自身の言語を駆使しつつ作品を 進化させてきた美術家が、他者の言語として詩人に求めたものはなにか。ここに現れるのはコラボレーションではなく、言語と美術という二つの力が、もたれあうことなく、協働の不可能性を明示することでより高次の作品空間を開いた、稀有なすれ違いの一例です。
若林奮
Isamu Wakabayashi
旧石器時代の美術に関する思考を深化させていくなかで若林は、《振動尺》という特異な概念・装置を考案する。これは主として自然観察において、対象物と自身との間の時空間を、厚みをもった無数の断面の重なりとして認識する「尺=物差し」であり、一定のシリーズとしてくりかえし彫刻作品化もされている。
この場合「振動」とは、認識する時空間に認識主体自身も含まれることに起因する、視覚と触覚とのズレ、不安定さを指す。《振動尺》とは、単に超越的な視点から時空間を断面化するのではなく、この主観的にして微細な「振動」を客観的かつ精確に計測せんとする矛盾を孕んだ、彫刻家の時空間把握の原基である。
1994年12月、若林奮は折にふれて対話を重ねてきた河野道代に1冊の小さな手づくり本を寄贈し、共同制作を提案した。6年後に実現したのが限定7部の作品集《花(静止しつつある夢の組織》である。若林奮は平出隆に製作を求め、多くの指示文書を送った。そこで平出が目撃したのが両者の作品の特異な遭遇である。
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