平出隆《via wwalnuts叢書》
1965年に初めて本づくりを経験し、紙の本の危機を生きてきた世代に属する平出隆は、さまざまな模索ののちに2010年、封筒に入れた便箋のような最小限の本の形態に到達。「郵便=書物」であるこの叢書において、郵便は単なる意匠ではなく、ひとりの書き手からひとりの読者へ直接届けられるという「形式=理念」を支える。
既存の本の形態から「書物以前」へと遡行し、流通や受容を含む支配的な本の「場」に疑義を呈することによって注目を集めたこの叢書は、初版40部、各冊777部限定として創刊された。詩、評論、エッセイ、講演録など多彩な内容を極小の形態で届ける。本展を契機に、美術論や美術家との対話が連続的に刊行されることになった。会場では空中を渡る「言語」と「美術」の架け橋として展示される。