Y-2 室 加納光於/中西夏之

 

中西夏之
Natsuyuki Nakanishi

1960年代の高松次郎、赤瀬川原平とのハイレッド・センターでの活動、土方巽ら舞踏家たちの舞台美術制作を経てのち、絵画を中心としつつも独自の概念「絵画場」を探究するインスタレーションを制作。描き手、見る者と絵画、そして現実空間の相互関係に対する複雑ながらも透徹した思考を展開する。

1988年、前年刊行の『家の緑閃光』に即した平出自身によるオブジェ展に際して、中西夏之は平出と公開対談を行う。折しも「緑と白」を主題とする絵画を制作していた中西は、当時不評であったその作品群の制作継続に根拠を与えたのは、その場での平出の発言であった、とくりかえし回顧して人に語ったという。

特殊な書法を採用している『家の緑閃光』の執筆プロセスについて聞きながら、中西は同作に登場するエリック・ロメールの映画『緑の光線』に関して質問を振り向けた。映画館のスクリーンではたしかに見える緑閃光がVHSでは見えないらしい、と平出が語ると、中西はそのことに異様な関心を示したというのだ。

不可視の緑色の光線とは光そのものたる白であり、すなわち「緑は白よりも白い」。同時期の《白・緑よりも白く》、画面中央をカドミウム・グリーンの色面が覆う《中央の速い白》といった連作のタイトルを支えているのは、物質としては決して顕現しない理念としての「白=光」をめぐる、このような論理である。

今回初めて展示される「緑と白」のテーマをめぐる中西の6点の未公開版画作品群は、絵画とは異なり、「版=写しとる」というプロセスが介在していることによって、「光」をめぐる画家の思考のありかたを、幾分ちがった角度から照らし出してくれるかもしれない貴重なものである。

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中西夏之
『大括弧 緩やかにみつめるためにいつまでも佇む、装置』

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中西夏之[I (b)]

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中西夏之[II (b)]

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中西夏之[III (b)]

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中西夏之[IV (b)]

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中西夏之[V (b)]

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中西夏之[VI (b)]