平出 隆 芸術人類学研究所所員
「野外をゆく詩学」の部門では、「芸術」と「場所」をめぐる問題を「言語」をとおして探究する。この発想から順次、複数のプロジェクトが進行しはじめ、おのずから名前を要し、それらがやがて階層をなしてきた。《フィールド・ミュージアム・ネット》2006、《エクリチュールとしての造本》2011、《アーキトとインプレス》2014である。これらがふたたび、発想当初の《野外をゆく詩学》2005に流れ入る。
固有の「場所」の概念が現実の土地から立ち上がり、記述空間をとおして、刻印と構築を実践しはじめた。やがて時代を超える「場」の思考として構想された「野外をゆく詩学」へと、階層ある連続性を築く、といえばよいだろうか。もちろんこの階層間の運動は、上昇するばかりか下降もし、還流もする。したがって今後は、この四つの名づけられた運動を、自在に組み立てなおすことになるようだ。
たとえば、私たちは 2015年1月を期に、インフォレター《BOOK-ARCHIT》を発刊し、「書物設計」の研究や実践の具体例を、随時広く伝えていこうとしている。書物刊行におけるtextが書物周辺の物質と混じりあいながらつくりだす運動としての時空そのものを、フィールドワークとしても再点検していく。さらにその時空を構築し、破壊し、建築し、すなわち、ARCHITECTUREとして掴むという課題も見出している。
そのメディアでは、毎号四つの研究活動・実践活動を、組み立てるようにして紹介するのだが、このような組立てや組替えの手法によって、未知なる「野外」の出現を呼び寄せようともしている。
つまり、手法自体が、この部門の構想全体に響きあおうとしているのだ。
Art Anthropology2015